あさぎり町中部ふるさと会

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2017年3月31日

第36回 ふるさと探訪 きじ馬 考(2)

 筆者は長らく、「きじ車」とか「きじ馬」とか呼ばれる玩具は、人吉を代表する玩具であると思っていた。ところが、調べてみると、今は製作が途絶えているものまで含めると大分県、福岡県、熊本県で知られている「きじ馬」や「きじ車」は表1のようにたくさんある。鹿児島県や佐賀県でも作られていたようであるが、途絶えたのか、具体的な作品例や伝承記事は見いだせない。
           表1「きじ馬」または「きじ車」の製作地と特徴
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 この表は、平成20年の福岡博物館の「きじ馬と木うそ」を基に筆者が九州における「きじ馬(車)」の特徴を整理したものである。まず、「きじ車」か「きじ馬」の呼称については、「・・馬」が多い。今に伝わる製作地や工房は、福岡県が9か所、大分県が3か所、熊本県が8か所である。「きじ馬」の背中の膨らみ、鞍の有無は、大分県や福岡県で製作されるものに鞍のあるものが多く、人吉球磨地方など熊本県南部のものには見られない。彩色は、大分県のものや宗像・福津以外は殆ど彩色されている。形状はまちまちであるが、大別すると、人吉球磨地方のように、首と頭部が同形となっているものと、大分県のもののように、首に頭と顔がつき、あたかも馬頭の形に似せたものがある。極め付きは、宗像市の「きじ馬」のように、たてがみや尻尾まで付した「きじ馬」もあるが、これは「きじ馬」が馬への憧憬と願望を具現化したものであろう。  
 さて、なぜ「キジ」なのだろうか。キジになった幾つかの逸話や故事がある。公家や貴族だけを相手にしたエリート僧侶をやめ、庶民への布教を始めた飛鳥・奈良時代の僧侶であった行基が山道で迷ったとき道案内をしたのがキジであり、縁起の良い鳥として信仰されてきた。また、「焼け野の雉子(きぎす)」という故事がある。山火事があり、鎮火した焼け跡を歩いていると、メスのキジがうずくまっており長い尾羽は黒くこげ、目のまわりも焼けただれていた。さらに近づいてみると、キジが飛び立った巣には5個の卵があり、火事の間も抱卵していたことがわかった。
これは、親が子を思う情がとても深いことの喩えとして語り継がれている。

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図1みやま市の宮本弥一郎作の「きじ車」図2宗像市の金子柳舟作の「きじ馬」

次に、なぜ「車」なのか、「馬」なのか。なぜキジを「車」や「馬」にしたのだろうか。言い伝えによると、「きじ馬」や「きじ車」は平家の落人が都を偲び懐かしんで作り始めたとある。筆者はどうもそうではなく、後での述べるように、人吉系「きじ馬」の頭の「大」文字を入れた願いと同じように、「きじ馬」の馬や「きじ車」の車に、庶民の願いが込められているような気がする。つまり、この「車」や「馬」には過酷な労働や荷役を少しでも楽にしたいという農民の願望が込められているのではないだろうか。薪用の雑木や製材用の建材を山から運ぶとき、今でこそトラックであるが、昔はほとんど荷車や荷馬車が使われた。車が入れない山道では馬が大木を引っ張り出していた。馬も入れない山道には木馬(きんま)によって木材を運び出していた。天秤棒で荷を肩に担いだ時代、荷車や馬に対する憧れと願望が「きじ車」であり「きじ馬」の玩具となったのであろう。そんな観点で、三地区の「きじ馬」や「きじ車」を見ると、大分県玖珠町の戸畑地区や山浦地区で作られている北山田系のキジ車の背には「鞍」がついている。みやま市瀬高町地方で作られている清水系の「きじ車」の車輪は、図1の如く四つである。これは4輪の車であり馬車である。福岡県宗像市の金子柳舟氏が作られる「きじ馬」には、図2のような麻のたてがみがあり、しっぽが植えこまれている。北山田系の「きじ馬」もシュロの毛を挿し、たてがみとしているものがある。ちなみに、人吉系のキジ馬には「鞍」はなく、車輪は二つ、二輪車、つまり人が引く荷車を表している。
 さて、次回は人吉系「きじ馬」の最大の謎、きじ馬頭部に書き込まれている「大」文字の謎について推考してみる。読者諸氏、人吉のお土産玩具、「きじ馬(車)」が手元にあったらぜひ頭部の「大」文字の確認をしていただきたい。
(つづく:次回は「きじ馬考」そのB)                
 
文責:杉下潤二 Tel: 090-3856-0715 junji@siren.ocn.ne.jp

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